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商標権侵害とは?事例や警告を受け...

#商標の基礎知識

商標権侵害とは?事例や警告を受けた場合の対処方法について

公開日:

2025/07/30

更新日:

2026.09.04

商標権侵害とは?深刻なリスクを回避するための完全ガイド 事例と対処法を徹底解説

自社のブランドやサービスを象徴するロゴや名称。これらは、顧客の信頼を勝ち取り、ビジネスを成長させるための重要な「顔」です。この大切な顔を法的に保護するのが「商標権」です。しかし、この商標権について正しく理解していないと、意図せず他社の権利を侵害してしまい、ビジネスに深刻なダメージを与えかねません。

本記事では、「商標権侵害」をテーマに、その基本的な知識から、具体的な侵害事例、そして万が一、権利侵害の警告を受けてしまった場合の具体的な対処法まで、網羅的に解説します。ビジネスを行うすべての方に知っておいていただきたい必須の知識です。

第1章:そもそも商標権・商標権侵害とは?

まず、基本となる「商標権」と、どのような行為が「商標権侵害」にあたるのかを正しく理解しましょう。

商標権とは?

商標とは、商品やサービスに使用するマーク(文字、図形、記号、立体的形状やこれらの結合、音など)のことを指します。そして商標権とは、その商標を特定の商品・サービスについて独占的に使用できる権利のことです。

この権利は、特許庁に商標登録出願を行い、審査を経て登録されることで発生します。商標権を取得することで、第三者が同じような商標を同じような商品・サービスに無断で使用することを防ぎ、自社のブランド価値や信用を守ることができるのです。

商標権侵害の成立要件


では、どのような場合に商標権侵害が成立するのでしょうか。商標権侵害は、以下の2つの要件を両方満たした場合に成立します。

  1. 登録商標と「同一」または「類似」の商標を使用していること

  2. 指定商品・役務と「同一」または「類似」の商品・役務に使用していること

ここで重要なのは、「類似」の範囲が含まれるという点です。「パッと見た印象が似ている」「呼び方が似ている」といった場合も、需要者が出所を混同するおそれがあれば「類似」と判断される可能性があります。

例えば、有名な清涼飲料水の「コカ・コーラ」という登録商標があったとします。

●   侵害にあたる可能性が高い例

○   「コカ・コーラ」という名前で別の会社が炭酸飲料を販売する。(商標も商品も同一)

○   「コカ・コーラ」によく似たロゴを使い、炭酸飲料を販売する。(商標が類似、商品が同一)

○   「コカ・コーラ」という名前で オレンジジュースを販売する。(商標が同一、商品が類似)

●   侵害にあたらない可能性が高い例

○   「コカ・コーラ」という名前で自動車修理サービスを提供する。(商品・役務が非類似)ただし、不正競争防止法上、不正競争となる可能性があります。

このように、「商標の類似性」と「商品・役務の類似性」という2つの軸で判断されるのが基本です。

直接侵害と間接侵害(みなし侵害)

商標権侵害には、上記の直接的な使用行為(直接侵害)だけでなく、侵害の準備段階とみなされるような行為も「間接侵害(みなし侵害)」として禁止されています。例えば、以下のような行為が該当します。

●   登録商標が付された商品を、譲渡や輸出のために所持する行為

●   登録商標に似たマークを付けた商品のパッケージを製造・販売する行為

●   指定商品等に使うために、登録商標を表示する物を製造したり、譲渡したりする行為

自社が直接販売していなくても、侵害を助長するような行為は差し止めの対象となる可能性があるため、注意が必要です。

第2章:こんな行為も?商標権侵害の具体的な事例

商標権侵害は、私たちが思う以上に身近なところで発生しています。ここでは、具体的な事例を見ていきましょう。

事例1:他社の有名ブランド名を自社の商品名に借用したケース

ある地方の菓子メーカーが、自社で製造したお菓子に、ある有名なお菓子の高級ブランドを連想させるような名称を付けて販売しました。パッケージのデザインもそのブランドの雰囲気に似せていたため、消費者が混同するおそれがあるとして、ブランド側から警告を受け、最終的に販売中止と損害賠償に至りました。

事例2:ウェブサイトや広告での侵害

【ドメイン名】 他社の登録商標を含むドメイン名を取得し、関連性の高い商品を販売するウェブサイトを運営していた事業者が、不正競争防止法違反および商標権侵害として訴えられた事例があります。

【リスティング広告】 検索エンジンのリスティング広告において、競合他社の登録商標を「広告文」の中に無断で使用し、あたかも自社がそのブランドの正規代理店であるかのような誤認を与える表示をしたため、侵害と判断されたケースがあります。 ※キーワードとして他社商標を設定すること自体は、直ちに侵害とはなりませんが、広告の表示態様によっては侵害リスクが高まります。

第3章:商標権を侵害するとどうなる?

もし商標権を侵害してしまった場合、権利者から以下のような厳しい法的措置を取られる可能性があります。

1. 民事上の請求

●   差止請求(商標法第36条) 現在行っている侵害行為の停止を求められます。例えば、商標の使用中止、商品の販売停止、在庫の廃棄、ウェブサイトの該当部分の削除などが要求されます。これは侵害者の故意・過失を問わず請求されます。

●   損害賠償請求(民法第709条) 侵害行為によって権利者が被った損害の賠償を請求されます。商標法には損害額の推定規定があり、権利者は以下のいずれかの方法で損害額を算定して請求することができます。

○   侵害者が得た利益の額

○   権利者が本来得られたはずの利益(逸失利益)の額

○   商標の使用許諾料(ライセンス料)に相当する額

●   信用回復措置請求(商標法第39条、不正競争防止法第14条) 侵害行為によって低下した権利者の業務上の信用を回復させるための措置を請求されます。具体的には、謝罪広告の掲載などがこれにあたります。

2. 刑事罰

商標権侵害は、民事上の責任だけでなく、刑事罰の対象にもなり得ます。故意に商標権を侵害した場合、「10年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金(またはその両方)」という非常に重い罰則が科される可能性があります(商標法第78条)。法人の場合は、さらに「3億円以下の罰金」が科される両罰規定もあります(商標法第82条)。

「知らなかった」では済まされない、深刻な結果を招く可能性があることを認識しておく必要があります。

第4章:もし商標権侵害の警告を受けたら?冷静に対応するための5ステップ


ある日突然、弁理士や弁護士から「商標権侵害警告書」という内容証明郵便が届いたら、誰でも動揺するでしょう。しかし、ここで最も重要なのは、冷静に、そして誠実に対応することです。無視することは最悪の選択であり、事態をさらに悪化させるだけです。

以下のステップに従って、慎重に対応を進めましょう。

ステップ1:警告書の詳細な内容を確認する

まずは警告書を隅々まで読み込み、相手の主張を正確に把握します。

●   誰が(権利者): 警告を送ってきたのは誰か?(個人か、法人か、代理人の弁理士・弁護士か)

●   どの商標権か: 侵害しているとされる登録商標の名称と「登録番号」を確認します。

●   どの商品・役務か: 権利者が主張する「指定商品・役務」の範囲を確認します。

●   どの行為が: こちらの、どの商品名やサービス、広告などが侵害にあたると指摘しているのか。

●   何を要求しているか: 使用の即時中止、商品の廃棄、損害賠償、謝罪など、相手の要求事項を明確にします。

ステップ2:相手の商標権の有効性を確認する

次に、相手が主張する商標権が、本当に有効なものかを確認します。これは、特許庁が提供する無料のデータベース「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」で誰でも調査できます。

警告書に記載された「登録番号」を入力し、以下の点を確認しましょう。

●   商標権が現在も有効に存続しているか?(更新手続きがされずに権利が消滅している場合もあります)

●   警告者が真の権利者か?

●   権利者が主張する指定商品・役務が、登録内容と一致しているか?

ステップ3:客観的に侵害の有無を検討する

相手の権利が有効であることを確認したら、次に自社の行為が本当に商標権侵害にあたるのかを客観的に検討します。

●   商標としての使用か?: 自社の使用態様は、商品の出所を示す「商標」としての使用にあたるか。例えば、単なるデザインの一部として使用していたり、商品の機能を説明する記述の中で使用していたりする場合は、「商標的使用ではない」と反論できる可能性があります。

●   商標は同一、又は類似しているか?: 自社のマークと相手の登録商標は、見た目(外観)、呼び方(称呼)、意味合い(観念)において、本当に同一、又は類似しているか。

●   商品・役務は同一、又は類似しているか?: 自社の商品・サービスと、相手の指定商品・役務は同一、又は類似しているか。

これらの判断は専門的な知識を要するため、自己判断は非常に危険です。

ステップ4:速やかに専門家(弁理士・弁護士)に相談する

警告書を受け取ったら、できるだけ早い段階で商標に詳しい弁理士や弁護士に相談してください。専門家は、客観的な立場から侵害の可能性を判断し、以下のような多角的な視点から最適な対応策をアドバイスしてくれます。

●   侵害の成否に関する法的見解

●   相手方との交渉戦略(和解交渉、ライセンス契約の可能性など)

●   反論の可否とその論拠(先使用権の主張、権利濫用の主張など)

●   回答書の作成

初期対応を誤ると、交渉が不利になったり、訴訟に発展したりするリスクが高まります。専門家への相談費用は、将来の大きな損失を防ぐための必要経費と考えるべきです。

ステップ5:交渉・対応方針を決定し、実行する

専門家と相談の上、最終的な対応方針を決定します。

●   侵害の可能性が高い場合     速やかに侵害行為を中止し、相手方と誠実に和解交渉を行います。損害賠償額の減額や、今後の使用に関するライセンス契約などを目指します。

●   侵害していないと判断できる場合   侵害に該当しない法的根拠を明確に示した回答書を、専門家を通じて相手方に送付します。

●   判断が難しいグレーな場合    訴訟リスクやビジネスへの影響を総合的に考慮し、専門家と相談しながら、交渉による早期解決を目指すのが賢明です。

第5章:商標権侵害を「しない」「させない」ための予防策


最も重要なのは、商標権侵害を未然に防ぐことです。以下の2点を徹底しましょう。

1. 新しいネーミングやロゴを使用する前の「先行商標調査」

新しい商品名、サービス名、会社名、ロゴマークなどを使用する前には、必ず先行商標調査を行いましょう。J-PlatPatを使えば自分でもある程度は調査できます。この一手間が、将来の大きなトラブルを防ぎます。

2. 自社の商標を早期に登録する

自社のブランドを守るためには、自社の商標を早期に登録しておくことが最強の防御策です。商標登録は「早い者勝ち」が原則です。他社に先に登録されてしまうと、たとえ自分が先に使っていても、その商標が使えなくなる可能性があります。自社のブランドを大切に育てるなら、事業の初期段階で商標登録を済ませておきましょう。

まとめ

商標権侵害は、悪意がなくても発生しうる、すべてのビジネスに潜むリスクです。しかし、そのリスクは正しい知識と事前の対策によって十分にコントロールすることが可能です。

●   商標権侵害は「商標が登録商標と同一又は類似か」と「商品・役務が指定商品・役務と同一又は類似か」で判断される。

●   侵害すると、差止請求、高額な損害賠償、刑事罰といった厳しいペナルティが待っている。

●   警告を受けたら、無視せず、冷静に専門家へ相談することが最善の策。

●   「先行商標調査」と「早期の商標登録」が、自社を守るための最も有効な予防策である。

本記事が、皆様のブランド戦略とリスク管理の一助となれば幸いです。自社の知的財産を正しく理解し、尊重することで、健全なビジネス活動を推進していきましょう。

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