#商標出願の方法・費用
公開日:
2025/11/14
更新日:
2026.06.30

個人事業主(フリーランス)として活動されている方や中小企業を経営されている方にとっても、商標は自社の商品やサービスを他社のものと区別し、信用を築くために非常に重要な手段の一つです。商標というと知名度のある企業が取るもの、と思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
「周りの知人が商標を取らなかったことで、後で真似されたり、逆に他人から『名前を使うな』と言われたりして後悔していた」そんな話を聞き、ご自身の事業を守るために商標登録を検討されている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
いざ商標登録について調べてみると、出願方法や費用はもちろんですが、「一度登録したらずっと有効なのか?」「期限があるなら、いつまでなのか?」といった期間に関する疑問が出てきます。この「期限」の問題は、せっかく取得した権利を失わないために、非常に重要なポイントです。
この記事では、商標権の「期限(存続期間)」や「耐用年数」に関するルールについて解説します。

商標権は、特許庁に出願し、審査を経て「設定登録」されることによって発生します。では、その権利はいつまで続くのでしょうか。
商標権の存続期間は、原則として設定登録の日から10年間です。
特許権(原則として出願から20年)や意匠権(原則として出願から25年)とは異なり、商標権の存続期間は「出願日」からではなく、「登録日」からカウントが始まります。
商標権の最大の特徴は、この10年間の存続期間が満了しても、更新登録の申請(と更新登録料の納付)を行うことで、さらに10年間権利を延長できる点にあります。そして、この更新は何度でも繰り返すことが可能です。
つまり、10年ごとに更新手続きを続ける限り、半永久的に権利を維持することができます。これは、事業活動の継続に伴ってブランド(商標)に蓄積されていく「信用」や「価値」を永続的に保護するための仕組みです。長く愛されるブランドほど、この更新制度の恩恵は大きくなります。
商標登録や更新の際には、特許庁に所定の費用(登録料・更新料)を納付する必要があります。この納付方法には、10年分を一括で納付する方法のほかに、「5年ごとの分割納付」という選択肢が用意されています。
これは、初期費用や更新時の費用負担を軽減するための措置です。
一括納付: 登録査定から30日以内に「10年分」の登録料を納付します。
分割納付: 登録査定から30日以内に「前期5年分」の登録料を納付します。この場合、登録日から5年以内に「後期5年分」の登録料を納付する必要があります。
一括納付: 存続期間満了前6ヶ月~満了日までに、「次の10年分」の更新登録料を納付します。
分割納付: 存続期間満了前6ヶ月~満了日までに、「次の前期5年分」の更新登録料を納付します。この場合も、存続期間満了から5年以内に「後期5年分」の更新登録料を納付する必要があります。
もし、分割納付を選択し、最初の「前期5年分」だけを納付した後、次の「後期5年分」の登録料を納付しなかった場合、商標権は登録日(または前回の存続期間満了日)から5年で消滅することになります。
事業の立ち上げ初期で資金繰りが厳しい場合や、まずは5年間様子を見たいという場合には、この分割納付制度を利用することで、実質的に「5年間の権利保有」を選択することも可能です。よく「商標の有効期間は5年 or 10年」と表現されますが、これはこのことを指しているのです。
「商標は更新すれば半永久的に使える」と聞くと、次に気になるのが「耐用年数」という言葉かもしれません。会計処理などで耳にすることもありますが、商標権における「耐用年数」は、法律上の権利期間と、会計上の資産価値の計算とで、少し意味合いが異なります。
まず、法律上の権利期間という意味での「耐用年数」についてです。
結論から言うと、商標権には法律上の「耐用年数」はありません。
前述の通り、商標権は10年ごとに更新手続きを行えば、理論上半永久的に権利を維持できます。特許権が「出願から20年」という絶対的な期限(耐用年数)を迎えると、それ以降は誰でも自由にその技術を使えるようになる(権利が消滅する)のとは、根本的に制度の目的が異なります。
商標は、使えば使うほど信用が蓄積される財産です。長年愛されてきたブランドを、一定期間が過ぎたからといって誰でも使えるようにしてしまっては、経済活動が混乱してしまいます。そのため、商標権には「20年経ったら効力がなくなる」といったルールは存在しないのです。
一方で、商標権を会社の資産として計上する「会計(税務)」の世界では、異なるルールが存在します。
商標権は、特許権や著作権などと同様に、目に見えない資産である「無形固定資産」として扱われます。そして、税法上、これらの無形固定資産は「減価償却」という手続き(取得にかかった費用を、一定期間にわたって分割して経費計上していく会計処理)の対象となります。
この減価償却を行うために定められている「法律(法令)で決められた使用可能な見積もり期間」が、法定耐用年数です。
商標権の法定耐用年数は「10年」と定められています。
ここで絶対に誤解してはいけないのは、これはあくまで「会計上のルール」に過ぎないということです。法定耐用年数が10年だからといって、商標権そのものの効力が10年で切れてしまうわけでは全くありません。会計上、10年かけて減価償却が終わったとしても、法律上の権利は更新手続きさえすれば、20年、30年と存続させることが可能です。
更新さえすれば権利が続くとはいえ、ただ単に「登録しっぱなし」にしておくのは危険です。商標制度には「不使用取消審判」という制度が設けられています。
これは、以下のような場合に適用されるルールです。
継続して3年以上、日本国内において、登録商標を指定商品・指定役務について使用していない場合、第三者(利害関係者)から「その登録、使っていないなら取り消してください」と特許庁に審判を請求される可能性があります。
もし、この審判を請求された場合、商標権者は「正当な理由なく使用していない」のではないこと、つまり「きちんと使用している証拠」を提出するか、「使用していなかったことについての正当な理由(例:天災で工場が稼働できなかった、など)」を証明しなければなりません。
この証明ができないと、商標登録は(該当する商品・役務について)取り消されてしまうのです。
事業戦略の変更やブランドのリニューアル、事業の撤退などにより、登録した商標を使わなくなるケースも考えられます。その場合、権利を消滅させるにはどうすればよいのでしょうか。
最も簡単で、費用もかからない方法は、存続期間満了時に更新登録申請を行わない(更新登録料を納付しない)ことです。
10年間の存続期間(または分割納付の場合は5年間)が満了すれば、権利は自動的に消滅し、特許庁の登録原簿からも抹消されます。特別な手続きは一切不要です。
個人事業主や中小企業の場合、使わなくなった権利を積極的に抹消する実益は少ないため、ほとんどの場合はこの「更新しない」という方法で権利を終了させています。
「更新時期(10年後)まで待てない」「すぐにでも権利関係を整理したい」という場合には、権利者が自ら権利を消滅させる手続きも用意されています。
これには、権利すべてを消滅させる「放棄」と、権利の一部を消滅させる「抹消(減縮)」があります。
権利者自身が、その商標権全体を放棄する意思表示を特許庁に行う手続きです。
手続き: 「放棄による商標権抹消登録申請書」という書面を特許庁に提出します。
費用: 登録免許税(1件につき1,000円、特許印紙ではなく収入印紙)
注意点: その商標権について他人にライセンス(専用使用権)を与えていたり、質権が設定されていたりする場合は、それらの人(専用使用権者や質権者)の承諾を得なければ放棄できません。
商標権全体ではなく、登録されている指定商品・指定役務のうち、一部だけを抹消したい場合の手続きです。
例えば、「第25類:被服、履物」で登録していたが、履物(靴)の事業はやめたので、「履物」の部分だけを権利範囲から削除したい、といったケースで使われます。
手続き: 「登録商標の指定商品(指定役務)の減縮(一部抹消)登録申請書」という書面を特許庁に提出します。
費用: 登録免許税(1件につき1,000円、特許印紙ではなく収入印紙)
これらの手続きは、特許庁への書面提出が必要となり、専門的な知識も求められるため、もし検討される場合は弁理士などの専門家に相談するのが確実です。また、放棄や一部抹消後に復活させることはできないので十分注意しましょう。特段の理由がなければ期限ギリギリまで翻意できるようにしておくのが良いでしょう。

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