#商標の種類・具体例
公開日:
2025/11/28
更新日:
2026.06.30

地域の産品をブランドとして確立し、その価値を守り育てるため、日々奮闘されている皆様は、品質の維持向上や新たな販路開拓、そして地道なPR活動と、様々な活動をされているかと思います。
その地域の特産品を、競合との差別化を図りながら全国で通用するブランドにするための有効な手段があります。それが「地域団体商標制度」です。
この記事は、地域団体商標の取得を検討する皆様に向け、制度の基礎知識、事例からわかるメリットを解説していきます。

地域団体商標制度とは、「地域名」と「商品(またはサービス)名」を組み合わせた名称(例:「大間マグロ」)について、その地域で事業を営む組合などの団体に、独占的な使用権(商標権)を与える制度です。ただし、「ある程度有名になっていることが条件」となります。
従来のルールでは、「地名」や「商品の一般的な名称(普通名称)」、あるいはその組み合わせ(例:東京のラーメン)は、公共財産であり、特定の一個人や一企業が独占すべきではないとして、商標登録が認められませんでした。
しかし、「大間マグロ」のように、地域の長年の努力によって「地名+商品名」が「高級ブランド」としての地位を確立した場合、このルールでは模倣品を防げません。こうしたブランドを守るために、2006年に導入されたのが地域団体商標制度です。
これから地域団体商標の取得を目指す上で、通常の商標との違いを2点説明します。
1、登録できる人(主体)が限定されている
通常の商標は、個人でも株式会社でも登録できます。
地域団体商標は、事業協同組合、農業協同組合、漁業協同組合、商工会、NPO法人など、法律で定められた「組合等の団体」に限られます。
※個人や株式会社では登録できません。
2、登録できる商標の構成が限定されている
通常の商標は、文字、図形、スローガンなど自由度が高いです。
地域団体商標は、原則として「地域の名称+商品(サービス)の名称」(例:「飛騨の家具」)または「地域の名称+商品の“通称”」で構成される必要があります。
さて、地域団体商標を取得すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。2つの事例から、その活用法を学びます。
最大のメリットは、法律に基づく強力な権利(差止請求権、損害賠償請求権)を得られることです。これにより、偽物や便乗品を販売する業者に対し、差止めや損害賠償を法的に要求できます。
登録商標: 大間まぐろ (登録第5051377号)
登録主体: 大間漁業協同組合(青森県)
【背景と課題】「黒いダイヤ」の偽物問題
「大間マグロ」は日本最高峰のマグロブランドですが、その知名度ゆえに「大間で水揚げされていないマグロ」が「大間マグロ」として流通する、深刻な偽物問題に長年悩まされていました。
【「本物の見える化」を徹底】
大間漁協は、地域団体商標を使い、「本物と偽物を誰の目にも明らかにする」戦略を取りました。
組合を通じて出荷される全ての「大間まぐろ」の頬に、商標ロゴと個体識別番号が入った「認証ステッカー(シール)」を貼り付けることを徹底しました。このステッカーの有無で、仲卸業者から消費者まで、誰もが「本物」を識別できるようにしたのです。
地域団体商標の登録により、この認証ステッカーがない「大間マグロ」は「商標権の侵害である」と厳しく対処できる明確な法的根拠を手に入れました。
商標は「組合等の団体」でしか取得できないため、そのブランド価値を維持するには、組合内で「品質基準」や「使用ルール」を定め、全員でそれを守っていく必要があります。
登録商標: 飛騨の家具(登録第5103618号)
登録主体: 協同組合 飛騨木工連合会(岐阜県)
【背景と課題】安価な輸入品との差別化
飛騨地方は日本有数の家具産地ですが、安価な輸入家具の台頭により、価格競争にさらされていました。個々の企業努力だけでは限界があり、「飛騨の家具=高品質・安全」という地域産業全体のブランドイメージ確立が課題でした。
【地域で厳格な品質基準を定める】
飛騨木工連合会は、地域団体商標を「共通の約束=品質保証」の証としました。
商標を使用するために、独自の厳格な「認定制度」を創設。品質(耐久性)、安全性(有害物質)、産地(飛騨地域での生産)、そして「10年間のメーカー保証」といった厳しい基準を定めました。
この基準をクリアした企業だけが「飛騨の家具」ブランドの使用認定を受けられます。これにより、組合内での品質の足並みを揃え、安価な輸入品との明確な差別化に成功しました。
このように、地域団体商標は「守り」と「攻め」の両面で大きな効果を発揮します。
大間まぐろー 模倣品排除・真贋判定(守りの活用)
飛騨の家具ー 品質保証・付加価値向上(攻めの活用)
しかし、商標を取得することはゴールではなく、スタートに過ぎません。 ブランドが成長し、環境が変化する中で、その権利をどう管理・運用していくかが、難しい課題でもあります。
地域団体商標制度は、正しく活用すれば、ブランドを模倣品から守る強力な手段となると同時に、地域の事業者を結束させ、品質を維持するための共通の指針として機能します。
「大間マグロ」の事例では、この制度を法的保護の手段として活用し、偽物を効果的に排除しました。「飛騨の家具」の事例では、制度を地域の結束と品質向上のための枠組みとして活用し、産業全体の信頼性を高めることに成功しています。
この制度は、商標権の取得が最終目的ではありません。取得した権利をいかに具体的に運用し、地域のブランド価値を高めていくかが最も重要です。

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