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商標権侵害されたと思ったときの対...

#商標の基礎知識

商標権侵害されたと思ったときの対処方法 

公開日:

2025/07/31

更新日:

2026.07.09

自社のブランド価値を守るために取得した商標権。もし、第三者に無断で使用され、その権利が侵害された疑いがある場合、どのように対処すればよいのでしょうか。焦りや怒りから性急な行動をとってしまうと、かえって事態を悪化させかねません。

本記事では、商標権の侵害が疑われる場合に取るべき行動について、初期対応から法的手続きまでを体系的に解説します。自社の重要な知的財産である商標を守り抜くため、ぜひご一読ください。

1. はじめに:商標権侵害とは?

まず、どのような行為が商標権の侵害にあたるのかを正しく理解することが重要です。

商標権とは、商品やサービスに使用するマーク(商標)を、その商品やサービスについて独占的に使用できる権利です。特許庁に登録することで発生します。そして商標権侵害とは、正当な権限がない第三者が、登録商標を指定商品・役務について無断で使用する行為などを指します。

具体的には、主に以下の2つのケースが典型的な商標権侵害(直接侵害)となります。

① 登録商標と同一の商標を、指定商品・役務(サービス)と同一の商品・役務に使用する行為。

② 登録商標と類似の商標を、指定商品・役務と同一の商品・役務に使用する行為、または登録商標と同一もしくは類似の商標を、指定商品・役務と類似の商品・役務に使用する行為。

「類似」の判断は、商標の見た目(外観)、読み方(称呼)、意味合い(観念)などを総合的に考慮し、需要者が商品やサービスの提供元を混同するおそれがあるかどうかで判断されます。

さらに、これらの直接的な使用行為だけでなく、侵害行為を誘発する可能性が高い準備段階の行為も「間接侵害(みなし侵害)」として禁止されています。(商標法第37条)

●   指定商品・役務と同一・類似の商品・役務に使うために、登録商標と同一・類似の商標を表示した物を所持、譲渡、輸出入する行為。

●   侵害品を製造するために必要な物を製造・販売する行為。

自社のブランドイメージや信用を毀損し、売上にも深刻な影響を及ぼす商標権侵害に対しては、毅然とした態度で臨む必要があります。

2. 侵害発見時の初期対応:冷静な証拠収集と権利確認

ん。まずは冷静に状況を把握し、然るべき対応を取るための準備を進めましょう。

(1) 証拠の保全・収集

今後の交渉や法的手続きを有利に進めるためには、客観的な証拠が何よりも重要です。相手が証拠を隠滅してしまう可能性もあるため、発見後速やかに証拠を保全・収集することが不可欠です。

【収集すべき証拠の例】

●   ウェブサイト・SNS

○   侵害が疑われるページのスクリーンショットやPDFでの保存。URLとアクセス日時がわかるように記録します。

○   可能であれば、ウェブサイト全体を保存するツールも活用しましょう。

●   商品・パンフレット等

○   侵害品そのものを購入する(購入日時、店舗名、レシートなどを保管)。

○   商品の写真(全体、商標部分の拡大写真など、多角的に撮影)。

○   カタログ、パンフレット、広告などを入手する。

●   その他

○   展示会での写真や配布物。

○   メディアで紹介された記事など。

重要なのは、「いつ」「誰が」「どのような形で」商標を使用していたかを客観的に証明できるようにすることです。可能であれば、公証役場で「確定日付」を取得したり、タイムスタンプサービスを利用したりすることで、その日時にその文書が存在したことを法的に証明でき、証明力を高めることができます。

(2) 自社の商標権の再確認

相手の行為を追及する前に、足元である自社の権利内容を正確に確認しておく必要があります。特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)などを利用して、以下の点を確認しましょう。

●   商標登録番号: 権利の特定に必須です。

●   登録商標: 文字、図形など、登録されている商標そのもの。

●   指定商品・指定役務: 権利が及ぶ商品・サービスの範囲。この範囲と非類似の範囲での使用には、原則として権利は及びません。

●   権利の存続期間: 存続期間が満了していないかを確認します。更新手続きを忘れていると権利が消滅している可能性があります。

●   商標権者名・住所: 現在の情報と一致しているか確認します。

これらの情報を基に、相手の使用態様が自社の商標権の範囲(特に指定商品・役務と同一又は類似の範囲)に本当に含まれるのかを、慎重に検討します。

3. 具体的な対処方法の選択肢

証拠収集と権利確認が完了したら、いよいよ具体的なアクションに移ります。侵害の状況や相手方の態度に応じて、いくつかの選択肢が考えられます。一般的には、穏当な手段から段階的に進めていくことが多いです。

(1) 警告書の送付

まず検討すべき最も一般的かつ有効な手段が、内容証明郵便による警告書の送付です。

【警告書の目的】

●   商標権侵害の事実を相手に通知し、認識させる。

●   侵害行為の中止を正式に要求する。

●   相手方の見解を求める。

●   (後の訴訟において)相手が侵害の事実を知っていたこと(故意)を立証する証拠となる。

【警告書に記載すべき主な内容】

1.通知人(自社)の情報: 会社名、代表者名、住所など。

2.被通知人(相手方)の情報: 氏名・会社名、住所など。

3.自社の商標権の特定: 商標登録番号、登録商標、指定商品・役務。

4.相手方の侵害行為の具体的内容: いつ、どこで、どの商品に、どのように商標を使用しているかを具体的に記載します。

5.要求事項

    ○   侵害行為の即時中止

    ○   侵害品の在庫の廃棄

    ○   ウェブサイトからの表示削除

    ○   (必要に応じて)損害賠償請求の意思表示

6.回答期限: 通常は1〜2週間程度の期限を設定します。

7.「本書面を以て催告します」といった文言

8.日付と通知人の記名押印

警告書は、単に要求を伝えるだけでなく、法的な主張を明確にする重要な書面です。記載内容に不備があったり、不適切な表現を用いたりすると、逆に相手方から反論される隙を与えかねません。そのため、この段階から弁理士や弁護士といった専門家に作成を依頼することを推奨します。専門家の名前で送付することで、相手方にこちらの本気度を示し、交渉を有利に進める効果も期待できます。

(2) 交渉による解決(和解・ライセンス契約)

警告書を送付した後、相手方から何らかの回答があれば、交渉のフェーズに入ります。相手が侵害を認めて要求に応じれば、そこで解決となります。しかし、侵害の認識がない、あるいは金額面で折り合いがつかない場合などは、交渉による解決を目指します。

●   和解     双方の譲歩により、裁判外で紛争を解決する方法です。裁判に比べて迅速かつ低コストで解決できるメリットがあります。和解が成立した場合は、後々のトラブルを防ぐため、合意内容を明記した和解契約書(示談書)を必ず作成しましょう。なお、裁判に至った場合でも裁判上の和解をすることができます。

●   ライセンス契約    交渉の結果、相手方に商標の使用を継続させたい、あるいは相手方が使用継続を強く望む場合には、ライセンス契約を締結するという選択肢もあります。これにより、相手の事業に登録商標を使用することを公式に認める代わりに、自社は安定したライセンス料(ロイヤルティ)を得ることができます。

(3) 法的措置(訴訟)

警告や交渉によっても問題が解決しない場合や、相手が悪質で交渉の余地がない場合は、裁判所を通じた法的手続きを検討します。

【民事上の措置】

●   差止請求(商標法第36条) 侵害行為を行っている、または行うおそれのある者に対し、その行為の停止や予防を求める請求です。侵害品の廃棄や、侵害行為に供した設備の除却なども併せて請求できます。

●   損害賠償請求(民法第709条、商標法第38条)  侵害行為によって受けた損害の賠償を求める請求です。商標法には、損害額の算定を容易にするための特則が設けられています。例えば、侵害者が得た利益の額を、権利者が受けた損害額と推定することができます。

●   信用回復措置請求(商標法第39条において準用する特許法第106条) 侵害行為によって害された業務上の信用を回復するために必要な措置(謝罪広告の掲載など)を請求できます。

これらの訴訟は専門性が高く、手続きも複雑であるため、事実上、弁護士への依頼がほぼ必須となります。また、訴訟には時間と費用がかかることも覚悟しておく必要があります。

【仮処分命令の申立て】

通常の訴訟は判決までに長い時間がかかります。その間に侵害行為が拡大し、回復不能な損害が生じるおそれがある場合には、仮処分命令の申立てを検討します。これは、本格的な訴訟の前に、裁判所が暫定的に侵害行為の停止などを命じる迅速な手続きです。

(4) その他の手続き

【税関による輸入差止申立て】

侵害品が海外で製造され、日本に輸入されている場合は、税関に対して輸入差止申立てを行うことができます。申立てが受理されると、税関での水際対策として、全国の税関で侵害品の輸入を差し止めてもらうことが可能になります。これは模倣品対策として非常に有効な手段です。手続きは弁理士が代理して行うことができます。

【警察への告訴(刑事罰)】

故意による悪質な商標権侵害は犯罪行為です。侵害者を処罰してほしいと考える場合は、警察に告訴状を提出し、刑事事件として捜査を求めることができます。商標権を侵害した者には、「10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金、またはその両方」という重い罰則が科せられます(商標法第78条)。

4. 専門家への相談の重要性

これまで見てきたように、商標権侵害への対処は、法律的な知識と実務的な経験が要求される場面が多くあります。適切な対応を誤れば、解決が遠のくだけでなく、かえって不利な状況に陥ることもあります。

早い段階で専門家に相談することが、迅速かつ適切な解決への近道です。

●   弁理士  

知的財産の専門家です。商標権侵害の成否判断、警告書の作成・送付、相手方との交渉、税関への輸入差止申立てなどを代理します。

●   弁護士

法律紛争の専門家です。差止請求や損害賠償請求などの訴訟代理、仮処分命令の申立て、刑事告訴など、裁判所での手続きを代理します。

まずは、商標権侵害案件の経験が豊富な弁理士に相談し、状況の分析と対応方針の策定を依頼するのが一般的です。その後の展開次第で、弁理士と連携して弁護士が対応することになります。専門家に依頼することで、法的なリスクを管理し、精神的な負担を軽減しながら、本業に集中することができます。

5. まとめ

商標は、長年の努力によって築き上げてきた企業の信用とブランド価値の象徴です。その価値が第三者によって不当に利用されることは、断じて看過できません。

商標権侵害が疑われる事態に直面した際は、以下のステップを念頭に置き、冷静かつ毅然と対応してください。

  1. 状況把握と証拠収集・保全

  2. 自社の権利内容の正確な確認

  3. 専門家(弁理士・弁護士)への相談

  4. 警告書の送付による侵害中止の要求

  5. 交渉による解決(和解・ライセンス)の模索

  6. 最終手段としての法的措置(訴訟、税関差止、刑事告訴)の検討

自社の貴重な知的財産を守るためには、日頃からの監視体制を整えることが重要です。

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