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#商標の基礎知識

商号(社名)で商標登録するべきか? メリットや登録しないリスクを解説

公開日:

2025/05/30

更新日:

2026.08.04

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企業がビジネスを行う際、重要な要素のひとつが「ネーミング」です。特に会社の「商号(会社名)」は、企業の信用やブランドイメージを左右する重要な資産となります。しかし、商号は会社法に基づいて登記される一方で、商標法とは異なる法的保護の仕組みを持っています。そのため、商号を商標としても登録しておくべきかどうか、慎重な判断が求められます。

この記事では、商号と商標の違いを明確にしながら、なぜ商号を商標登録すべきなのか、商標登録しないリスクやメリット・デメリット、登録の実務的な注意点について詳しく解説します。

商号と商標の違いとは?

まずは、混同されやすい「商号」と「商標」の違いを整理しましょう。

商号とは?

商号とは、会社法に基づき法人が登記する名称のことを指します。会社法で定められ、法務局に登記することで会社名として正式に認められます。商号は会社を特定し、他社と区別するための重要な要素です。

商号は、同一の市町村で既に同じ商号が登録されている場合には、登録を受けることができません。そのため、商号には地域ごとの独占性がある程度認められています。しかしながら、異なる市町村であれば、既に登録されている商号と同一の商号でも登録を受けることができるため、商号が登録されたとしても、必ずしも全国的に保護されるわけではありません。

商標とは?

一方、商標とは、商品やサービスを識別するために用いられるマークや名称のことです。商標法に基づいて特許庁に登録することにより、一定の範囲で独占的にその名称やロゴを使用する権利が認められます。

商標には、「指定商品・役務」や「区分」という概念があり、たとえば「飲料品に関する商標」「ITサービスに関する商標」など、業種ごとに保護範囲が明確に定められています。

商号(社名)登記と商標登録の違い

商号は、会社法に基づく「会社名」のことで、法務局に登記します。同一住所で同じ商号は登記できませんが、同じ商号の会社が存在することもあります。

商標法に基づく「商品・サービスのブランド名やロゴ」のことで、特許庁に登録します。登録すれば、同一・類似の範囲で全国的に独占して使用できます。商標登録しなくてもその名称を使えますが、もし競合などが同じ名前で商標登録してしまうと自社で使用できなくなります。

商号は「会社自身の名前」、商標は「商品やサービスのブランドを守るための名前・マーク」です。以下で表形式でまとめています。

区分

商号

商標

根拠法

会社法

商標法

登録機関

法務局

特許庁

権利範囲

会社名としての独占使用(同一市区町村内での同一 商号の登記は不可)

登録した商品・サービス区分における独占使用

保護期間

永続

10年(更新可能)

効力範囲

日本国内

日本国内

その他

会社設立時に必須。同一市区町村内で同一の商号は登記できない。

任意。登録することで全国的に独占使用できる。他社からの商標権侵害に対して差止請求や損害賠償請求が可能になる。

商号(社名)と商標、どちらが保護の範囲が広い?

結論からいえば、「商号」は法人名の保護には有効ですが、「商品・サービスのブランドを守る」ためには「商標登録」が不可欠です。

商標権は、指定した商品・サービスにおいて、登録商標を「商標」として独占的に使用することのできる権利です。「商標」としての使用とは、商標が商品やサービスの出所を識別する目的で使用されることを指します。そのため、あなたの会社の名称(商号)でITサービスを提供していたとしても、他社があなたの会社の名称(商号)で商標をIT業界で先に登録していれば、登記された商号であっても、商標として使用することができなくなる可能性があります。最悪の場合、商標として商号を使用することができなくなる事態も考えられます。

商号を商標登録すべき理由・メリット

 ①ブランド価値の独占と保護

商号がそのまま商品やサービスの名称として使われる場合、第三者が同一または類似の名称を同業界で使用すれば、顧客の混乱や信頼性の低下を招きます。商標登録をしておけば、法的に排他的使用が認められるため、ブランドの独占的な使用が可能になります。

 ②他社からの差止請求リスクの回避

自社の商号が、他社の登録商標と類似している場合、後から商標権侵害で警告や訴訟を受ける可能性があります。そうなると、社名の変更や賠償請求といった甚大な影響を受けることもあります。あらかじめ商標登録しておけば、こうしたリスクを事前に防ぐことができます。

 ③信用力の向上と取引先への安心感

商標登録がなされている企業は、知的財産権の管理に配慮しているという印象を与え、取引先や顧客からの信用が増します。特に大手企業や官公庁との取引においては、商標登録の有無が評価項目となる場合もあります。

商号を商標登録する際の注意点

①登録区分の選定

商標登録の際には、自社の事業に応じて「指定商品・役務(サービス)」を選ぶ必要があります。間違った指定商品・役務(サービス)で登録してしまうと、自社の事業が指定商品・役務(サービス)からずれてしまい、実質的に保護されない、ということになります。

②類似商標の調査

登録出願前には、既存の登録商標を確認し、競合や類似の商標がないかを調査しましょう。すでに存在する商標と似ていると、登録が拒絶されるか、登録されたとしても後に異議申立てや無効審判を受ける可能性があります。

③ロゴとの一体登録

商号をロゴとしてデザインして使っている場合は、そのロゴデザインごと商標登録することも可能です。ただし、文字商標として登録する場合と、図形商標として登録する場合では保護の範囲が異なります。そのため、いずれの商標で登録を受けるか、という点について戦略的な登録が必要となります。

商標登録の費用と期間

商標登録費用

商標登録の費用は、大きく分けて「出願料」と「登録料」があり、1区分でおおよそ以下の金額がかかります。

  • 出願料:約12,000円(1区分の場合)

  • 登録料:約32,900円(1区分・10年分の場合)

弁理士に依頼する場合の手数料:1区分の出願で、約5万~10万円程度(事務所により異なる)

商標登録までの期間

出願から登録までは、通常6ヶ月から1年ほどかかります。この期間は、審査状況や補正の有無により前後するため、余裕を持って手続きを進めることが大切です。

商標登録しない場合のリスク

商号を商標登録せず、そのままで放置していると、以下のようなリスクが現実になります。

①他社に先に商標登録されてしまうリスク

自社が使っている名称でも、商標登録をしていなければ、第三者に先に登録されてしまう可能性があります。その場合、たとえ先に使っていたとしても、自社の使用が制限される、あるいは商標権侵害に問われるリスクが発生します。最悪のケースでは、社名や商品名の変更、看板や名刺、Webサイトなどの修正コストが発生し、信用まで損なわれかねません。

②差止請求や損害賠償請求を受ける可能性

他者が同じ名前で商標登録をしていた場合、自社がその名前を使い続けていると差止請求や損害賠償の対象となる可能性があります。「知らなかった」「先に使っていた」といった言い分は、商標法上の正当な抗弁にはなりません。

③ブランド価値が守れない

商標の登録がされていなければ、自社の名称やロゴを模倣・悪用されても商標法に基づいて差し止めることができません。特にSNSやネット通販の世界では、模倣品やなりすましが簡単に出回り、ブランド価値が著しく損なわれる恐れがあります。

商標登録をするデメリット

その一方で、商号を商標登録する場合にも一定のデメリットがあります。

商標登録に費用がかかる

先ほど述べたように、商標登録には以下の費用がかかります。

  • 出願料:1区分の場合12,000円

  • 登録料:1区分の場合32,900円

  • 特許事務所に依頼する場合の手数料:1区分の場合 概ね5~10万円

ただし、区分が増えるとこれらの費用も増加します。

商標登録に関する期限管理の手間やコスト

商標登録の場合、登録料の納付や、商標権の更新などの手続きは、法律で定められた期間内に行う必要があります。したがって、これらの手続の期限を管理するための時間や人的コストが必要となります。

商標が取り消されてしまう可能性もある

折角、取得した商標権であっても、継続して3年以上指定商品・役務(サービス)において登録商標を使用していない場合には、第三者からの不使用取消審判により、商標権が取り消される場合があります。

商号を商標登録した場合には、指定した商品やサービスに登録商標を使用しないというケースは少ないと考えられますが、使用の態様によっては商標としての使用でないと、特許庁に判断される可能性もあるため、使用の態様に注意する必要があります。

商号(社名)であっても商標登録は有効

企業の顔ともいえる「商号」は、事業のブランドそのものである場合が多く、その名称を他社に使われないよう守るためには、商標登録が不可欠です。特に、商号を商品名やサービス名として使用している場合は、商標権として明確に保護する必要があります。

商標登録は、単なる法的手続きではなく、企業の価値を守り、将来的なトラブルを予防する「経営戦略の一部」です。自社の商号を本気で育てたい、守りたいと思うのであれば、今すぐにでも商標登録を検討すべきでしょう。

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