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#商標の基礎知識

使用しない商標の放棄方法や放置した場合のリスクを解説 

公開日:

2025/12/23

更新日:

2026.06.30

事業を展開する上で、自社の商品名やサービス名、ロゴマークなどを「商標」として登録することは、ブランドを法的に保護し、他社との差別化を図るために非常に重要です。また、商標権を取得することで、その名称やマークを独占的に使用でき、模倣品や類似サービスに対して法的な対抗手段を持つことができます 。

しかし、事業戦略の変更やサービスの終了などに伴い、時間と費用をかけて取得した商標を使用しなくなるケースは決して珍しくありません。

この記事では、商標登録はしたものの現在は使用していない方や、今後使用する予定がなくなった商標の扱いに悩む方に向けて、使用していない商標を持ち続けるリスク、そして適切な対処法について解説します。

商標を使用しないことのリスクとは?

商標権は、取得すれば永久に安泰というわけではありません。商標制度は、あくまで使用を前提としており、登録後に商標を使用していない状態が続くと、企業は複数のリスクを抱えることになります。ここでは主なリスクを整理します。

1. 不使用取消審判を請求されるリスク

使用していない商標を放置する最大のリスクが、「不使用取消審判」を第三者から請求されることです。

不使用取消審判とは?

継続して3年以上、日本国内でその登録商標を指定商品・指定役務について使用していない場合に、第三者(利害関係は問われません)が特許庁に対してその商標登録の取消を請求できる制度です 。(商標法第50条)

この制度の目的は、使用されていない商標権が障害となり、他者が新しいビジネスのために使いたい名称(商標)を登録・使用できなくなる事態を防ぐことにあります。

ただし、商標権者本人が商標を使用していない場合でも、ライセンスビジネスとして他者に商標の使用を許諾し、ライセンスフィー(商標権使用料)を得ていることがあります。このように、許諾を受けた第三者が3年以内に商標を使用している場合には、「不使用取消審判」の取消事由には該当しません。

そのため、不使用取消審判を請求する前には、問題となる商標が本当に使われていないのかどうか、商標権者だけでなく、ライセンシーによる使用状況も含めて、事前に丁寧に調査しておくことが重要です。

2. 無駄なコストと管理の手間が発生する

● 更新料の発生ー商標権の存続期間は最大10年です 。権利を維持し続けるためには、10年ごと(または5年ごとの分納 )に更新登録料を特許庁に納付し続ける必要があります 。使用していない商標のために、このランニングコストを支払い続けるのは経済的ではありません。

● 管理の手間ー弁理士(特許事務所など)に商標の管理を依頼している場合、更新時期の案内や手続き代行のための管理手数料や報酬が別途発生することもあります 。

使用していない商標を放置することは、経済的な負担と管理の手間という、目に見えるデメリットを伴います。

使用しない商標の主な対処法

では、使用していない商標は具体的にどう対処すべきでしょうか。主な対処法は以下の4つです。

対処法1:更新せずに権利を消滅させる

商標権の存続期間満了日までに更新登録の手続きを行わなければ、その商標権は期間満了をもって自動的に消滅します

放棄のための特別な手続きは不要です。弁理士に管理を依頼している場合は、次回の更新時期が近づいた際に「更新しない」「権利を放棄する」という意思を伝えるだけで十分です。

対処法2:商標権の抹消登録をする

更新を待たずに、特許庁に「商標権抹消登録申請書」を提出して商標権を放棄することができます。その商標権は、特許庁で抹消登録が完了した日をもって消滅します 。なお、ここで商標権の「一部のみ」を放棄することもできます。この場合は、放棄したい区分や指定商品・指定役務を記載した「商標権の一部抹消登録申請書」を特許庁に提出します。

対処法3:他者へ譲渡(売却)する

商標権は、不動産や株式と同じ「財産権」の一種です。そのため、他者に譲渡(売却)することができます 。

自社では使用していないものの、そのネーミングやロゴデザイン自体に魅力を感じ、欲しがる他社が存在するかもしれません。特に、覚えやすい名称やデザイン性の高いロゴであれば、譲渡によって対価を得られる可能性があります。

譲渡には、商標権の全体を譲渡する方法(全部譲渡)と、指定商品・指定役務の一部のみを譲渡する方法(一部譲渡)があり、部分的な譲渡も可能です。

商標権を譲渡するためには、特許庁に「商標権の移転登録申請」を行う必要があり、これには所定の費用がかかります 。

対処法4:他者へライセンス(使用許諾)する

自社では使用しないものの、権利は保持したまま、他社にその商標の使用を許可(ライセンス)し、対価としてライセンス料(ロイヤルティ)を得る方法です 。ロイヤルティ収入を得ながら権利を維持することができ、ライセンシーが商標を使用していれば、「不使用取消審判」のリスクを回避することができます。

商標権の放棄を決定する際の注意点

使用しない商標を「放棄する(更新しない)」と決めるのは簡単ですが、その決定が将来のビジネスに思わぬ影響を与えないか、以下の点を慎重に確認する必要があります。

1. 本当に将来使用する可能性はないか?

一度権利を消滅させてしまうと、将来「やはりあのブランド名を復活させたい」と思っても、元に戻すことはできません。

再度、商標権を取得したい場合は、もう一度ゼロから「商標登録出願」を行い、特許庁の審査を通過する必要があります 。

その際、もしあなたが権利を手放した後に、他者が類似の商標を先に出願・登録してしまっていたら、あなたは二度とその商標を登録できない可能性があります 。

「現在は使用していないが、数年後に事業を再開するかもしれない」といった少しでも可能性がある場合は、費用を支払ってでも権利を維持(更新)する戦略的判断も必要です。

2. 関連する商標権とのバランスはどうか?

自社が保有する他の商標権との関連性も考慮すべきです。

● 例1:文字とロゴ 「ABC」という文字商標と、「ABC」のロゴ(図形)商標の両方を持っている場合。「ロゴはリニューアルしたので使わないが、文字としての『ABC』は使い続ける」のであれば、ロゴ商標のみを更新せず、文字商標は維持する必要があります。

● 例2:防御的な出願 メインブランド「X」を守るために、類似しがちな「X’(エックスダッシュ)」も登録していた場合。現在は「X’」を使っていなくても、「X」を守るという戦略的な目的のために「X’」を維持し続ける、という判断もあり得ます。

自社の知財の権利全体を見渡し、放棄する商標が他の重要な権利の保護に影響を与えないかを確認しましょう。

本記事で触れている、商標の譲渡については、こちらの記事も是非参考にしてみて下さい。

商標権は譲渡できる?手続きとポイントを解説

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