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アプリ・ソフトウェアの商標登録と...

#商標の基礎知識

アプリ・ソフトウェアの商標登録と区分の解説

公開日:

2026/05/11

更新日:

2026.06.30

スマートフォンアプリやWebサービスの市場は競争が激しく、日々新しいサービスが誕生しています。その中で、自社のサービス名やブランドを法的に守る商標登録は、単なる事務手続きではなく、事業の存続に関わる重要な経営戦略です。

本記事では、アプリ・ソフトウェア業界特有の商標制度の仕組みと、失敗しないための区分の選び方について、解説します。

1. なぜアプリ・ソフトウェアに商標登録が必要なのか

デジタル製品であるアプリやソフトウェアは、物理的な商品以上に商標の重要性が高い領域です。主な理由は次にあげます。

① ストアからの強制削除(リジェクト)リスク

AppleのApp StoreやGoogle Playストアは、知的財産権の侵害に対して非常に厳格です。他社から商標権侵害の申立があった場合、プラットフォーマーは事実確認の間、アプリを一時公開停止にする、あるいは強制削除するといった措置をとることがあります。

一度削除されれば、それまでのダウンロード数やレビュー、ASO(アプリストア最適化)の積み上げが台無しになってしまう可能性があります。

② 先行使用が認められにくい

日本の商標制度は「先願主義」、つまり先に出願して登録した者が権利を持つ仕組みです。 そのため、どれだけ早くアプリをリリースして知名度を得ていたとしても、後から他社に商標登録されてしまえば、原則として登録した側が優先されます。

「先に使っていた」という主張(先使用権)が認められる可能性はありますが、要件は非常に厳しく、立証にも時間と費用がかかります。 こうしたリスクを避けるためにも、早い段階で商標登録を済ませておくことが、最も確実で負担の少ない方法といえます。

③ 類似アプリ・模倣品の排除

ヒットしたアプリには、似た名称やアイコンを使った「コピーアプリ」が現れることが少なくありません。 商標権を取得していれば、弁護士を通じた警告や、各ストアへの申し立てによって、こうした模倣アプリをスムーズに排除することができます。

2. ソフトウェア業界の重要な課題——「区分」の選択

商標登録で最も専門性が求められるのが、「区分(類)」の選択です。 商標は、名称そのものだけでなく、その名前をどの範囲で使うのか(区分)とセットで登録する仕組みになっています。 アプリやソフトウェアの場合は、特に次の3つの視点から区分を検討する必要があります。

視点1 提供形態(第9類 vs 第42類)

もっとも基本的かつ、もっとも混同されやすいのがこの2つです。

  • 第9類(ダウンロード型)
    ユーザーが自分のスマホやPCにプログラムを、ダウンロード・インストールして使用するものを指します。

(例:スマホゲーム、画像編集アプリ、オフラインで動くツールなど)

  • 第42類(SaaS・クラウド型)
    プログラム自体をダウンロードさせるのではなく、ネットワーク経由で機能を提供(SaaS/ASP)することを指します。

(例:ブラウザでログインして使う業務ソフト、クラウド家計簿、オンラインストレージなど)

※現代のアプリは、ダウンロード(9類)して、サーバーと通信しながら機能を利用(42類)する形態が多いため、基本的には「9類」と「42類」の両方を押さえるのが業界標準となっているようです。

視点2 サービスの内容(第35類〜第45類)

ソフトウェアであること以上に、そのソフトを使って何をするのかという事業内容に基づいた区分が必要です。特許庁の審査では、ここが漏れているとサービス名としての保護が不十分になる可能性があります。

  • 第35類(広告・事務・小売)ネットショッピング、フリマアプリ、求人情報アプリ、広告配信など

  • 第36類(金融・不動産)決済アプリ、証券取引アプリ、家計簿ソフト、不動産検索など

  • 第38類(通信)チャットアプリ、ビデオ会議システム、掲示板など

  • 第39類(輸送)配車アプリ、地図・ナビゲーション、デリバリーなど

  • 第41類(教育・娯楽) オンラインゲームの提供、ニュース配信、学習アプリ、動画配信など

  • 第45類(個人・社会サービス): マッチングアプリ(婚活)、SNS、占い、法的支援など

視点3 将来の拡張性

現在は「無料の計算ツール(9類)」であっても、将来的に「課金制のオンライン家計簿(36類・42類)」に進化させる予定があるなら、あらかじめそれらの区分も含めて登録しておくのが今後の事業展開を含めて有用です。

3. 何を登録すべきか?(文字・ロゴ・アイコン)

アプリのブランド構成要素のうち、優先順位をつけて登録を検討しましょう。

①アプリ名(標準文字)最優先です。フォントやデザインに関わらず「名前そのもの」を独占できます。

②アプリアイコン(図形)ホーム画面での視認性を守るために重要です。

③ロゴデザイン 特定のフォントやシンボルマークが組み合わさったデザイン。

予算に限りがある場合は、まずはアプリ名の文字商標を、主要な区分(9類・42類+サービス内容の区分)で登録するところからスタートするの良いでしょう。

4. 商標登録までのプロセスと期間

商標登録は、申請すればすぐに権利が得られるものではありません。実際には、いくつかのステップを踏みながら進んでいきます。

①事前調査
J-PlatPatなどを使用して、既存の商標と衝突しないか調査します。「読み方が同じ」「意味が似ている」「見た目が似ている」ものは、全く同じ名前でなくても拒絶されるリスクがあります。

②商標出願(特許庁への申請)
調査を終えたら、願書を作成し、特許庁へ提出します。ここから正式な審査プロセスが始まります

③審査(6ヶ月〜10ヶ月程度)
現在、特許庁の審査は混雑しており、結果が出るまで半年以上かかるのが一般的です。

※条件を満たせば「早期審査」を利用でき、2〜3ヶ月程度に短縮される場合もあります。

④登録・料金納付
審査を通過すると「登録査定」が届きます。登録料を納付することで、正式に商標権が発生します。

商標登録は時間と手間のかかるプロセスですが、正しい手順を踏めば確実にブランドを守る力になります。

5. まとめ

アプリ開発にどれだけ時間やコストを投じても、商標権ひとつでその努力が失われてしまう可能性があるからこそ、開発初期の段階で名称調査を行い、9類(物)と42類(サービス)の両面を押さえつつ、アプリの目的に応じたサービス区分(35〜45類)を見極めて適切に出願し、必要であれば海外展開を見据えた外国商標やマドプロ出願も検討するなど、商標登録を、IT事業の保険として早めに整えておくことが、ブランドを安全に育て、事業を長期的に守るための備えとなるでしょう。

他の業種の区分・商標知識に関しては、これらの記事を参照してください

D2Cブランドが知っておきたい、商標登録のメリットや登録しないリスク

飲食店が知っておきたい商標登録のメリットや登録しないリスク

※ご注意※ 本記事は情報提供を目的としており、法的助言を構成するものではありません。具体的な出願にあたっては、弁理士等の専門家にご相談ください。

ブランドを守るためにGVA 商標登録で出願された事例

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