#商標の基礎知識
公開日:
2026/02/27
更新日:
2026.06.30

飲食店を開業する際、物件選びやメニュー開発、内装工事には多くの情熱と時間を注ぐものの、意外と後回しにされがちなのが商標登録です。 「うちは個人経営の小さなお店だから関係ない」「法人登記しているから大丈夫だろう」と考えていませんか?実は、その油断が大きな問題になることがあります。
本記事では、飲食店経営者が知っておくべき商標登録の基礎知識から、登録しないことによるリスク、そして登録することで得られるメリットについて、具体的な事例を交えながら解説します。

まず、飲食店経営において「商標」とは具体的に何を指すのかを整理しましょう。具体的には次の3つが代表的です。
「カフェ・ド・〇〇」「麺屋△△」といったお店の名前そのものが商標になります。看板、メニュー、Webサイト、チラシなど、あらゆる場面で使われる「お店の顔」です。
文字だけでなく、お店のロゴ(図形やシンボルマーク)も商標の対象です。文字と図形を組み合わせて一つの商標として登録することも一般的です。
例えば
①マクドナルド:(マクドナルド インターナショナル プロパティーカンパニー リミテッド)

②スターバックスコーヒー:(スターバックス・コーポレイション)登録4806987、他

③コメダ珈琲 (株式会社コメダ) 登録6272409

お店の名前だけでなく、独自に開発したメニュー名も商標になり得ます。特別なネーミングのスイーツや、独自の調理法をアピールする名称などが該当します。
たとえば、
マクドナルドの「ビッグマック」登録2188711 他
スターバックスの「フラペチーノ」登録4612716 他
コメダ珈琲店の「シロノワール」 登録4490309 他
蒙古タンメン中本の「北極ラーメン」登録5763412
これらはすべてメニュー名そのものが商標として守られている例です。
(※必ず起こるものではありませんが、商標登録をしていないと避けにくいリスク)
商標登録には、自分の名前やロゴを独占的に使えるようにする“攻め”の効果と、他社が同じ名前を使えないようにする“守り”の効果の両方があります。どちらか一方ではなく、この二つがそろってはじめてブランドが安全に育っていきます。
そして、登録を後回しにした場合に生じるリスクは、単なる金銭的な損失にとどまらず、事業そのものに影響を及ぼすことがあります。
商標登録をしていない場合、他社が同じ名前や似た名前を先に登録してしまうと、その名称の使用について指摘を受ける可能性があります。
長く使ってきた店名であっても、商標の権利は「先に出願した側」に与えられるため、内容証明郵便などで使用の見直しを求められるケースもあります。日本の商標制度は先願主義のため、「自分の方が先に営業していた」という事情だけでは、必ずしもそのまま使い続けられるとは限りません。
万が一、名称の変更が必要になった場合、一定のコストやブランド面での影響が生じます。看板・メニュー・ショップカードなどの差し替えに伴う物理的なコスト、WebサイトやSNS、ドメインの変更。また、常連のお客様が店名変更に気づくまでの認知の揺らぎなど。これらは一度に発生するため、心理的・金銭的な負担が大きくなりがちです。
また、検索結果や口コミサイトでの表示が変わることで、しばらく集客に影響が出ることもあります。
名称の使用について争いになった場合、過去の使用期間に対して費用の支払いを求められることがあります。
特に、相手が大手企業であったり、名称の類似度が高い場合には、示談金などの負担が発生するケースもあります。必ずしも高額になるとは限りませんが、予期せぬ支出として経営に影響する可能性は否定できません。
リスクを回避するだけでなく、商標登録には経営を加速させるポジティブなメリットが数多くあります。
商標権を取得すると、その店名やロゴを日本国内で優先的に使えるようになります。近隣に似た名前の店舗ができたり、人気にあやかって類似した名称を使われそうになった場合でも、権利に基づいて名称の見直しを求めることができます。模倣を防ぎ、ブランドの印象を安定して保てる点は大きなメリットです。
2店舗目の出店やフランチャイズ展開を視野に入れる場合、商標登録はほぼ必須といえます。商標権がない状態では、ブランド名を安心して使い続けられる保証がなく、加盟店側も不安を感じてしまいます。商標権は、ブランドを他者に使用許諾する際の法的な裏付けとなり、事業拡大の土台をつくります。
登録済みの商標には「®(Rマーク)」を付けることができ、権利関係が整理されているブランドとして信頼感が高まります。金融機関からの融資や、商業施設への出店交渉でもプラスに働くことが多く、テナント契約の条件として商標登録を求められるケースも増えています。ブランドの管理体制を示す一つの指標として機能します。
商標登録をしていると、その情報は特許庁のデータベース(J-PlatPat)で誰でも確認できます。新しく店名を考える事業者が調査を行った際、あなたの商標が見つかれば、その名称を避ける判断につながります。結果として、類似店とのトラブルを未然に防ぐ抑止力として働きます。
商標登録をする際は、どの分野(区分)で権利を取るかを指定する必要があります。ここを間違えると、せっかくお金を払って登録しても意味がないことがあります。
飲食店がまず登録すべきなのは第43類です。レストラン、カフェ、居酒屋、キッチンカー、ケータリングなど、店内外で飲食サービスを提供する場合は、この区分が基本になります。日々の営業で店名やロゴを使う場面の多くが、この区分でカバーされます。
テイクアウトや通販を行う飲食店が増えたことで、サービスだけでなく「商品」としての商標保護も重要になっています。第43類はあくまで“飲食サービス”の区分であり、持ち帰り商品そのものは別の区分で守る必要があります。
たとえば次のようなケースです。
オリジナルドレッシングやソースを瓶詰めして販売する
冷凍餃子や冷凍カレーを通販で販売する
焼き菓子やパンを包装してテイクアウト商品として販売する
これらは「商品」として扱われるため、内容に応じて次の区分が必要になります。
第30類(菓子、パン、調味料、麺類)など
第29類(肉製品、加工食品、水産加工品)など
さらに、
・ロゴ入りTシャツやエコバッグなどのグッズ販売を行う場合は、第25類(被服)
・店頭での食品販売、オンラインショップ(自社EC)、他社製品を仕入れて販売する場合などは、物を売るサービスとして、 第35類(小売・卸売・EC運営)
・自家製ドリンクやオリジナル酒類を商品化する場合には、それぞれ、第32類(飲料)、ア第32類または第33類(アルコール)
などの区分の検討が必要です。
店名は、飲食店にとって単なる呼び名ではありません。
「またあのお店に行きたい」「あの味が忘れられない」とお客様が思い出すとき、そこには必ず店名の記憶があります。料理へのこだわり、心地よい接客、店内の雰囲気など、お店が積み重ねてきた価値がその名前に宿っています。
商標登録をしていない状態は、こうした大切な名前を守る手段がないままにしているということでもあります。
一方で商標権を取得すれば、店名を安心して使い続けられ、未来にわたってお店の大切な資産として育てていくことができます。
また、様々な職種での区分に関してはこちらの記事も併せてお読みください。
福岡食品株式会社 代表取締役 田島様は、GVA 商標登録を利用して、自分で書類を作成して出願をされています。詳しくは以下からご覧ください。


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