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色彩商標とは?事例や他の商標との...

#商標の種類・具体例

色彩商標とは?事例や他の商標との違いについて解説

公開日:

2026/01/30

更新日:

2026.06.30

私たちの身の回りには、特定の色を見るだけで「あの企業の商品だ」「あのお店だ」と直感的に認識できるものが数多く存在します。 コンビニエンスストアの看板の色、有名文具のストライプ柄、人気スナック菓子のパッケージカラーなど、色彩は言葉以上に強力なメッセージを消費者に伝えています。

企業経営において、こうした「色の組み合わせ」をブランド資産として守ることは極めて重要です。 日本の商標制度では、2015年の法改正により、従来の文字や図形に加えて「色彩のみからなる商標(色彩商標)」の登録が可能になりました。

しかし、色彩商標は非常に強力な権利である反面、登録の難易度は極めて高く、安易に出願しても認められないケースが大半だということに注意が必要です。 本記事では、色彩商標の定義やメリット、代表的な登録事例、他の商標との違い、そして高い登録ハードルを乗り越えるためのポイントについて解説します。

1.色彩商標(色彩のみからなる商標)とは

①色彩商標の定義

色彩商標とは、単色または複数の色彩の組み合わせのみで構成され、文字や図形のような輪郭(境界線)を持たない商標のことをいいます。

従来の「図形商標(ロゴ商標)」でも色は使われてきましたが、それはあくまで「特定の形状」の中に色が塗られているものであり、権利の中心は「形」にありました。 一方、色彩商標は形状に依存せず、「色彩そのもの」を権利の対象とします。

②導入された背景

色彩商標は、2015年(平成27年)4月1日に施行された改正商標法によって、「新しいタイプの商標」として導入されました。同時に「音商標」「位置商標」「動き商標」「ホログラム商標」も導入されています。

導入の背景には、企業のブランド戦略の多様化があります。 グローバル市場において、言語の壁を越えて商品を識別させるために「色」や「音」を活用する企業が増加しました。欧米など諸外国では既に色彩商標が保護されていたため、国際的な制度調和の観点からも、日本での導入が求められていたのです。

参考リンク:商標の種類と利用目的 ・具体例を解説

2.色彩商標を取得するメリット

色彩商標を取得することには、通常の商標とは異なる独自のメリットがあります。

  • 言語の壁を超えたブランド認知 色は言語を介さないため、直感的に情報を伝達できます。日本語が読めない外国人観光客や、子供に対しても、色を見るだけで「あの店だ」「あの商品だ」と認識させることが可能です。グローバル展開を見据えたブランド戦略において極めて有効です。

  • 強力な「類似品」対策 商品名やロゴが少し違っていても、パッケージの色合いを似せた「模倣品」が出回ることがあります。色彩商標を取得していれば、こうした「色使いだけを似せた商品」に対しても、商標権侵害として差止めや損害賠償を請求できる可能性が高まります。ブランドの世界観そのものを法的に強力に保護できる点が大きな強みです。

  • 広告宣伝効果の最大化 「この色の組み合わせといえば自社」という認識を消費者に植え付けることができれば、社名や商品名を大きく打ち出さなくても、色だけでブランドを想起させることができます。これにより、シンプルかつ効果的な広告展開が可能になります。

3.色彩商標の主な登録事例

色彩商標は登録が非常に難しいことで知られていますが、いくつかの著名な商品やサービスが登録をされています。これらの事例を知ることで、どのような場合に登録が認められるのか、イメージが掴めるでしょう。

① 株式会社トンボ鉛筆「MONO消しゴム」

商標登録第5930334号) 色彩商標の登録第1号として有名なのが、トンボ鉛筆の「MONO消しゴム」です。 「青・白・黒」の3色ストライプは、1969年の発売以来、長年にわたって使用されてきました。

この事例のすごいところは、消しゴムのスリーブ(ケース)に「MONO」という文字が書かれていなくても、この3色の並びを見ただけで多くの日本人が「トンボ鉛筆の消しゴムだ」と認識できる点です。 まさに、色がブランドのアイデンティティそのものになっている好例です。

②株式会社セブン‐イレブン・ジャパン

商標登録第5933289号) コンビニエンスストア最大手、セブン-イレブンの店舗看板に使用されている「白地にオレンジ・緑・赤」のストライプも登録されています。

街中でこの配色の看板を見かければ、店名を確認するまでもなく「あそこにセブン-イレブンがある」と認識できます。小売業において、店舗の色彩が強力な集客機能(顧客誘引力)を持っていることを法的に認めた事例といえます。

③ 日清食品株式会社「チキンラーメン」

商標登録第6534071号) 世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」のパッケージに使用されている「セピア色とオレンジ色のストライプに白帯」の配色も登録されています。

キャラクターの「ひよこちゃん」やロゴ文字がなくても、この独特の配色を見るだけで味や商品を想起できるほどの認知度を獲得していることが認められました。

④ 株式会社ファミリーマート

商標登録第6085064号) ファミリーマートの店舗看板などに使われている「緑・白・青」の組み合わせも登録されています。セブン-イレブンと同様に、コンビニ業界におけるコーポレートカラーの重要性を示しています。

4.色彩商標の登録ハードルは極めて高い

ここまで登録事例を紹介しましたが、これらはほんの一握りの成功例に過ぎません。 実際には、色彩商標の出願件数に対する登録率は非常に低く、わずか1%台とも言われています。 なぜ、これほどまでに登録が難しいのでしょうか。

①原則として「識別力がない」と判断される

商標登録の要件として最も重要なのが「自他商品識別力(自分の商品と他人の商品を区別する力)」です。

特許庁の審査基準では、単なる「色彩」は、本来誰でも自由に使用できるべきものであり、商品の魅力を高めるためのデザインとして使われることが多いため、「原則として識別力がない」として取り扱われます。 例えば、食品に「赤色」を使ったり、洗剤に「青色」を使ったりすることは一般的であり、特定の一社にその色を独占させることは、市場の自由競争を阻害する恐れがあるからです。

特に「単色(一色のみ)」の色彩商標については、これまでに数多くの出願がなされていますが、登録された事例は極めて稀です。現在登録されている事例のほとんどは「複数の色彩の組み合わせ」です。

②「使用による識別力」の証明が必要

では、なぜトンボ鉛筆やセブン-イレブンは登録できたのでしょうか。 それは、商標法第3条第2項に定められた「使用による識別力の獲得」を証明したからです。

これは、「本来は識別力がない商標であっても、長期間にわたり広く使用された結果、需要者(消費者)が『これはあの会社の商品だ』と認識できるようになった場合」に限り、例外的に登録を認めるという規定です。

③登録のために必要な証拠

この「使用による識別力」を特許庁に認めてもらうためには、膨大な証拠資料を提出しなければなりません。

  • 使用期間: 数十年単位での継続的な使用実績。

  • 使用地域: 日本全国で広く販売・展開されていること。

  • 売上高・シェア: 業界内での高いシェアや販売実績。

  • 広告宣伝費: テレビCM、新聞、Webなどで大量の広告を行い、色が認知されるよう努力した実績。

  • 消費者アンケートの結果: 「この色の組み合わせを見て、どこの商品か分かりますか?」というアンケートを行い、非常に高い認知度(例えば8割以上など)があることを客観的な数値で示す必要があります。

セブン-イレブンの事例でも、登録に至るまでに複数回のアンケート調査結果を提出するなど、粘り強い立証活動が行われました。単に「有名だから」という理由だけでは登録されず、客観的なデータによる裏付けが不可欠なのです。

5.他の商標との違い

色彩商標と混同しやすい商標タイプとの違いを整理します。

図形商標は、赤や青など色の付いたロゴを登録できるものの、保護されるのはあくまで「形状」であり、色が似ていても形が異なれば侵害を問えない可能性があります。これに対し色彩商標は、「色の組み合わせそのもの」を保護対象とするため、トンボ鉛筆のように文字やレイアウトが多少異なっても、青・白・黒の並び順や比率が同じであれば権利侵害を主張できる余地があります。

また、位置商標は「特定の位置に付された標章」に識別力を認めるのに対し、位置を指定した色彩商標はあくまで色彩が主役であり、位置はその表現方法の一部にすぎません。このように制度上の区分は専門的で複雑なため、どのタイプで出願すべきかは、個別の事情に応じて専門家と検討することが重要です。

6.色彩商標出願のプロセスと費用

基本的な出願の流れや特許庁に支払う印紙代(出願料・登録料)は、通常の商標と同じです。

参考リンク:商標の種類と利用目的 ・具体例を解説
商標登録の費用はいくら?弁理士依頼と自分で出願する場合の内訳・料金相場を解説

7.色彩商標は強力なブランド戦略だが登録のハードルは高い

色彩商標は、文字やロゴに頼らず、消費者の感性に直接訴えかけることができる強力なブランド資産です。 登録されれば、競合他社が似たような配色の商品パッケージや看板を使用することを排除でき、自社ブランドの独自性を圧倒的に高めることができます。

しかし、その登録難易度は商標の中でトップクラスに高く、生半可な実績では認められません。 「これから流行らせたい色」を登録するのではなく、「すでに長年の使用により、国民的な認知を得ている色」を後追いで保護するための制度だと理解するのが現実的です。

まずは通常の商標登録から

これからブランドを育てる中小企業や個人事業主の方は、いきなり色彩商標を目指すのではなく、まずは「ネーミング(文字商標)」を確実に商標登録することをおすすめします。 その上で、長期的なブランド戦略の一環として、将来的に色彩商標の取得を目指して特定の色を使い続け、認知を積み重ねていくのが賢明なアプローチといえるでしょう。

自社の商品やサービスの「色」にこだわりがあり、将来的に権利化を検討したい場合は、早い段階で知財の専門家である弁理士に相談しましょう。

色彩商標に関しては、こちらの記事も是非参考にしてください。

位置商標とは?事例や他の商標との違いを解説

立体商標とは?事例や他の商標との違いを解説

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