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#商標出願の方法・費用

AI関連サービス・事業のための商標出願・登録ガイド

公開日:

2026/07/10

更新日:

2026.07.10

生成AIが一般層に浸透して数年、急速にビジネスにおいても欠かせない道具となりました。IT・DXやSaaS領域で事業を展開するスタートアップにとって、このトレンドを活用しない手はありません。

AIといってもLLMなどコア部分の技術であれば特許を含めた知財がターゲットになりますが、もう一段上のレイヤーではマーケティングやブランドも事業の成否に影響します。そこで重要になることの一つが商標です。

本記事では、AI領域でのスピーディな事業展開を支える商標の活用シーン、登録するメリット、区分の選び方、そして出願時の注意点、出願方法を解説します。

AI関連サービスにおいて商標が重要視される理由

スタートアップの創業期は、対象領域でのプロダクト・サービスのリリースと、そこでのPMF(プロダクトマーケットフィット)獲得にリソースが集中します。知的財産のうち、特許はまだしも商標登録は少し先のタイミング、正直に言えば二の次と考えるケースも少なくありません。

確かに急いで商標出願・登録する必要はないかもしれませんが、最低限、競合サービスや近いジャンルのサービスと混同されるおそれのある名称がないかは、リリース前にチェックしておく必要があります。スタートアップ領域は多産多死でスピードが速く、なかには急激に認知が広がるサービスも出てきます。その知名度を利用しようとしたり、先回りして権利化し利益を得ようとしたりする第三者が現れる可能性もゼロではありません。こうした動きに対して、商標登録は高い防御効果を発揮します。

商標のユースケースも文字だけでなく、スマートフォンアプリのアイコンやSNSアカウント上のロゴなど多様です。

事業が成長すれば、海外展開やテレビCMなど、サービスが露出するステージも上がっていきます。目に触れる機会が増えるほど、どこかで既存の商標とバッティングしてしまうリスクも高まるため、商標登録は有効な備えになります。また、資金調達やM&Aの準備が短期間で進む可能性も十分に想定でき、そのタイミングで権利関係の不備が発覚すると手痛いダメージになりかねません。商標の手続きは、実際のサービス展開よりも前もって着手しておく必要があると理解しておきましょう。

特にAI領域では、リリース後の短期間で認知が急上昇したり、SNS上で言及が広がったりするなど、BtoB向けのサービスであってもコントロールが難しい場面があります。商標や特許といった知財の手続きは早くても数カ月は必要で、こうしたスピード感に即応することが難しいからこそ、事前に想定して手を打てるかどうかが重要になります。

AI関連サービス・事業における商標登録のメリット

商標登録には、いくつかの観点から具体的なメリットがあります。

メリット①競争優位性の確保

商標権を取得すれば、指定した商品・役務の区分において、その名称やロゴを独占的に使用する権利が発生します。同じ市場で似たようなサービス名が乱立しやすいAI領域では、自社のブランドを法的に守りながら差別化を図れる点が大きな強みになります。

メリット②模倣対策

似た名称・ロゴを使う後発サービスに対して、商標権に基づき使用差止めや損害賠償を請求できるようになります。無登録のままだと、悪意の第三者に先に商標を取得され、自社が使っていた名称を使えなくなるリスクさえあります。いわゆる「商標の冒認出願」や便乗を防ぐ意味でも、早めの権利化は有効な保険になります。

メリット③信用構築

商標登録により「®」マークを表示できることは、対外的にプロダクトが一定の事業基盤を持っていることの証にもなります。特にAIサービスは技術的な実態、他社との差異が見えにくく、ユーザーや取引先が安心材料を求める傾向があるため、商標登録済みであることが信頼性の裏付けとして機能します。

メリット④資金調達やM&Aへの備え

資金調達やM&A、大規模な提携の場面でも商標は評価対象になります。デューデリジェンスでは、事業の中核となる名称やロゴについて権利関係が整理されているかが必ず確認されます。

未登録のまま、あるいは第三者と抵触するリスクを抱えたままでは、投資家や買収企業から懸念材料と見なされ、条件面で不利になったり手続きが遅れたりすることがあります。逆に言えば、早期に商標を押さえておくことは、将来の資金調達やイグジットをスムーズに進めるための地味ながら重要な布石になります。

AI関連サービスにおける商標活用シーン

商標の対象は、社名やサービス名だけではありません。AI関連事業では、以下のような場面で商標が活用されます。

サービス名・プロダクト名

最も基本的な対象です。SaaSプロダクトやAIエージェントの名称は、事業のブランド価値そのものを担うため、早期の権利化が望まれます。アプリ名も同様で、スマートフォンアプリとしてストアに公開する際の名称やアイコンは、ユーザーとの最初の接点になるため保護の優先度が高い要素です。

ロゴやシンボルマーク

これらも商標の対象になります。文字だけでなく図形やロゴタイプ、あるいは文字とロゴを組み合わせた結合商標として出願することも可能です。ブランドガイドラインを整備する段階で、あわせて商標出願も検討するとよいでしょう。

機能名やAIモデル名

これらも見落とされがちなポイントです。特定の生成機能やアシスタント機能に固有の名称を付けている場合、それがサービス全体のブランドを超えて独り歩きすることもあります。将来的に単独でライセンス提供したり、他社にAPI提供したりする可能性がある機能名は、早めに権利関係を整理しておく価値があります。

このほか、キャッチフレーズやスローガン、SNSアカウント名、イベント名なども商標の対象になり得ます。事業のどの要素が「ブランドの顔」になっているかを棚卸しし、優先順位をつけて権利化を検討することが実務上のポイントです。

参照記事:生成AIで作成したロゴを自分で商標登録する方法

AI分野で商標登録する際の区分選定のポイント

商標登録では、商品・役務を45の区分に分類し、実際に使用する区分を指定して出願します。AI領域はまだ新しい分野であるため、「これがAI業界の定番区分」という型が確立しきっていない面があります。有効な方法のひとつは、先行する類似サービスがどの区分で出願しているかを調べ、参考にすることです。

とはいえ、まずAI関連サービスでまず押さえておきたいのは、第9類と第42類です。第9類はダウンロード可能なソフトウェアやアプリケーション、AI機能を組み込んだ情報機器などの「商品」を指定する区分で、アプリ提供型のAIプロダクトであれば必須の区分といえます。第42類は「クラウドコンピューティング」「SaaSとしてのソフトウェアの提供」「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守」といった役務を指定する区分で、多くのAI SaaS事業はここを軸に権利化を進めます。

参考として、代表的なAIサービスであるChatGPTをJPlatPat(特許情報プラットフォーム)で検索すると、指定区分数は6つで、第9類、第35類、第38類、第41類、第42類、第45類にわたっています。指定商品・役務はかなり広範囲で、なかには「人工知能」という記載も見られますが、想像するほどAIに特化した内容ではなく、全体としては一般的なITサービスをカバーする構成になっている印象です。

つまり、AI領域のサービスであっても、商標の観点では一般的なITサービスの区分をしっかりカバーしておくことが重要だとわかります。加えて、AI関連サービスには特定の業種・職種に特化したものも多いはずです。たとえば医療、法務、人事、教育といった特定分野向けにサービスを展開する場合は、その分野を意味する商品・役務名を指定区分に含めておくと、より実態に即した権利範囲になります。また、現時点ではまだ着手していなくても、将来的に事業展開が見込まれる領域の区分や指定商品・役務を検討しておくことも、後々の追加出願の手間を減らす上で有効です。

参考記事:AI関連のサービス・商品で商標登録する際の区分の選び方

AI関連商標の出願・登録における注意点

出願前に必ず先行商標調査を行う

特許情報プラットフォーム(JPlatPat)を使えば、同一・類似の商標がすでに登録・出願されていないかを無料で確認できます。似た名称のサービスが先に同じ区分で登録していると、そのままでは出願が拒絶されたり、最悪の場合は他社の商標権を侵害してしまったりするおそれがあります。ネーミングを固める前の段階で調査しておくと、後戻りのコストを抑えられます。

記述的な商標に注意

「AI」「スマート」「クラウド」「アシスタント」といった、サービスの特徴や機能をそのまま表すだけの言葉は、識別力がないと判断されて登録が認められないことがあります。こうした一般的な語をブランド名に含める場合は、造語や固有の言い回しと組み合わせるなど、他社サービスと区別できる工夫が求められます。

参考記事:商標の識別力とは?有無の例や審査基準について解説

海外展開を視野に入れる場合の注意

国内の商標権が海外では通用しない点にも留意が必要です。商標権は国ごとに独立した権利であり、日本で登録していても、海外で第三者に先に同一・類似の商標を取得されてしまうと、その国でのサービス名の使用自体が難しくなることがあります。展開を計画している国・地域があれば、マドリッド協定議定書に基づく国際出願制度などを活用し、早めに対応を検討しておくとよいでしょう。あわせて、英語表記やローマ字表記にした際に、他言語で意図しない意味やネガティブな印象を持たれないかも確認しておくと安心です。

商標登録の手続きと費用・スケジュール

区分や指定商品・役務がある程度固まったら出願の準備に入ります。

全体の流れは、出願書類の作成・提出、特許庁による方式審査と実体審査、審査官からの拒絶理由通知への対応(発生した場合)、登録査定、登録料の納付、そして商標登録という順序で進みます。出願から登録まで、順調に進んだ場合でもおおむね半年から1年程度を見込んでおく必要があります。

拒絶理由通知への意見書・補正書対応が発生すると、さらに数か月延びることもあります。スタートアップとしては、資金調達やサービス名の対外発表など重要なマイルストーンから逆算して、出願のタイミングを早めに設定しておくのが安全です。

手続きの依頼先は、大きく分けてこの3つがあります。

  • 弁理士に依頼する

  • 自分で手続きする

  • オンライン商標登録サービスを利用する

弁理士に依頼する場合は、商標調査から書類作成、拒絶理由通知への対応まで専門家に一任でき、識別力や類似性の判断など専門的な見極めが必要な場面でも安心感があります。

自分で手続きする場合は費用を最小限に抑えられますが、区分や指定商品・役務の選定、拒絶理由への対応などをすべて自力で行う必要があり、時間的な負担や、不備による出願のやり直し・登録漏れのリスクが伴います。

オンライン商標登録サービスは、定型的な出願であれば低コストかつスピーディーに進められる点が魅力ですが、複雑な案件や個別の交渉が必要な場面では対応範囲に限りがある場合があります。

特許庁に納める公的手数料は全国一律で、出願料が3,400円+(区分数×8,600円)、登録料(10年分一括)が区分数×32,900円です。1区分・10年一括の場合、公的手数料の合計はおよそ44,900円になります(5年ごとの分割納付を選ぶ場合は、前期分が区分数×17,200円)。依頼先ごとの費用感の目安は以下のとおりです。

依頼先

費用の目安(1区分の場合)

特徴

弁理士(特許事務所)に依頼する

総額で10万〜15万円程度(公的手数料込み)

商標調査・書類作成・拒絶理由対応まで専門家が一貫サポート。複雑な案件や海外展開の相談にも対応しやすい

自分で手続きする(ゼロから出願書類を作成する)

公的手数料の実費のみ、約3万円程度

コストは最小限だが、区分選定や書類作成、審査対応をすべて自力で行う必要があり、時間的負担とやり直しリスクがある

オンライン商標登録サービスを利用する

総額でおおむね5万〜7万円程度(公的手数料込み)
参考:GVA 商標登録の利用料金

定型フォームで手続きが完結しスピーディー。費用と専門家サポートのバランスが取れているが、個別対応の柔軟性は限定的

どの方法を選ぶ場合も、まずは商標調査だけでも早い段階で済ませておくことをおすすめします。ネーミングを決める前に軽く調査しておくだけで、後から名称変更を迫られるような事態を避けられます。AI領域はスピードが命の市場だからこそ、権利関係の整理は「サービスが軌道に乗ってから」ではなく「軌道に乗る前」に済ませておくのが得策です。

参照記事:商標登録の費用はいくら?弁理士と自分で出願する場合の内訳・料金相場を比較

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