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#商標の基礎知識

商標登録されている言葉・単語はどこまで使える?商標権侵害となる基準も解説

公開日:

2026/09/08

更新日:

2026.09.04

商標登録されている言葉であっても、日常会話や一般的な説明の中でその言葉が一切使えなくなるわけではありません。商標権は「特定の言葉を独占し、他者の使用を全面的に禁止する権利」ではなく、自社の商品・サービスを他社と区別するためのブランドの目印を保護するための制度です。

本記事では、世の中で商標登録されている単語がどこまで自由に使えるのか、そしてどのような使い方が商標権侵害に該当するのかについて、適法と違法の境界線を実務目線でわかりやすく解説します。

1. 商標権は「言葉の独占」ではない

商標制度の目的は、消費者が「これはあの会社の製品だ」と迷わずに選べるようにすること(出所表示機能)と、企業が努力して築き上げたブランドの信用を守ることにあります。したがって、言葉そのものを辞書的な意味や日常の言語として使う行為に対しては、商標権の効力は及びません。 言葉は社会の共有財産であり、ひとつの企業が商標登録したからといって、世の中のあらゆる文脈での使用を禁止できるわけではないのです。

2. 商標登録されている単語を使えるケース(侵害にならないライン)

では、具体的にどのような使い方であれば、登録商標であっても自由に使えるのでしょうか。セーフとなる代表的なラインは以下の通りです。

① 普通の言葉として文章の中で使う場合(記述的表示)

商標登録されている単語であっても、自社商品の特徴や産地・品質を説明するために、一般的な言葉として使う場合は商標権侵害には当たりません。あくまで「説明目的」であり、ブランドの目印として使用していないためです。

例)「Apple」はIT機器の分野で商標登録されていますが、八百屋が「〇〇県産の美味しいApple(りんご)を入荷しました」 

とPOPに記載する行為は、果物の一般名称としての使用であり、商標権の侵害にはなりません。

② 自社ブランドの「目印」として使っていない場合

ニュース報道やレビュー記事、比較記事などで他社のブランド名に言及する行為は、自社の商品・サービスのブランドとしてその言葉を使っているわけではないため、原則として商標権侵害には当たりません。 目的が「情報提供」や「評価・比較」であり、ブランドの出所を示すために使用していない点がポイントです。

例)「〇〇(登録商標)を使ってみた感想」、「〇〇と△△の性能比較」といったブログ記事のタイトルや本文での使用は、自社製品のブランドとしてその言葉を使っているわけではない(自他の識別を目的としていない)ため、商標権侵害には当たりません。

③ 登録されている「分野(区分)」が全く異なる場合

商標は、登録時に「どの商品・サービスの分野で使うか(指定商品・指定役務)」を細かく区分して管理されています。そのため、登録されている分野が異なれば、同じ言葉でも別の企業が使用できるというのが商標制度の基本的な仕組みです。

例)「メロン」という名称が洋服ブランド(第25類)として商標登録されていたとしても、別の企業が文房具(第16類)の新ブランド名として「メロン」を使用することは、区分が異なるため原則として商標権侵害にはなりません。

例外)著名商標の場合

ただし、誰もが知る超有名ブランドについては、登録されている分野が異なっていても、その名称を第三者が勝手に使用すると、不正競争防止法 により差し止められる可能性があります。

これは、著名ブランドの信用力に便乗して自社の価値を不当に高めようとする行為――いわゆるフリーライド(Free ride) を防ぐための仕組みです。

※フリーライドとは、他者が長年かけて築き上げたブランドの信用や名声にただ乗りし、自社の商品・サービスを実際以上に魅力的に見せようとする不正な便乗行為を指します。 こうした行為は市場の健全性を損なうため、不正競争防止法によって規制されています。

参照:経済産業省|不正競争防止法 

参照:悪意の商標出願とは?目的や事例で解説

3. 商標権侵害となってしまう基準(アウトになるライン)

一方で、他社の商標権を侵害してしまう(アウトになる)のは、以下の3つの条件をすべて満たしてしまった場合です。

① 商標として使用している(商標的使用)

まず重要なのは、その言葉を 自社ブランドの目印として使っているかどうかです。

単なる説明文の一部として登場するのではなく、商品名・サービス名・ロゴ・パッケージのキャッチコピーなど、消費者に「これが私たちのブランドです」と示す形で使用している場合は、商標的使用に該当します。

つまり、言葉が自社ブランドの識別標識として機能しているかどうかが判断のポイントになります。

② 商品やサービスの分野が同じ、または似ている

次に、商標権者が登録している「指定商品・指定役務」と、自社がその言葉を使っているビジネスの分野が 重なっている、または類似している 場合です。

同じ市場で同じような商品・サービスに使われていると、消費者が「同じ会社のものかな?」と誤認する可能性が高まるため、侵害のリスクが一気に上がります。

③ 言葉(マーク)が同じ、または似ている

さらに、使用している言葉やマークが 外観(見た目)・称呼(読み方)・観念(意味) のいずれかで似ている場合もアウトになります。たとえ完全一致していなくても、消費者が「あの会社の関連商品かもしれない」と誤解するほど似ていると判断されれば、商標権侵害となります。

これら3つの要件がすべて揃ったとき、商標権侵害が成立し、差し止め請求や損害賠償などの法的リスクが発生します。商標の使用可否を判断する際は、この「3つのアウトライン」をセットで確認することが重要です。

参照:商標権侵害とは?事例や警告を受けた場合の対処方法について

4. 日常的に使われている「実は登録商標」な単語の注意点

私たちが普段、一般名称だと思って使っている言葉の中には、実は特定企業が商標登録しているものが数多くあります。以下に挙げている登録商標がその例です。

宅急便(ヤマトホールディングス株式会社)登録1377677

QRコード(株式会社デンソーウェーブ) 登録6181404

マジックテープ(株式会社クラレ)登録1501016

セロテープ(ニチバン株式会社)登録0546229号 

万歩計(山佐時計計器株式会社)登録1728037号  

これらは日常会話で使う分には問題ありません。

「宅急便で送るね」「QRコードを読み取ってね」といった使い方は、単なる説明や一般的な言語使用であり、商標権の効力が及ぶ範囲ではないためです。しかし、ビジネスの場面では注意が必要です。自社の商品・サービスの宣伝や広告でこれらの言葉を「ブランドの目印」として使ってしまうと、商標的使用に該当し商標権侵害となる可能性があります。

例えば、ヤマト運輸以外の配送業者を利用しているECサイトが「全品、宅急便で無料配送!」と広告に大きく記載する。

他社の歩数計アプリがアプリ名に「万歩計」を使用する。など、

こうした使い方は、商標権者のブランドを自社の識別標識として利用してしまうため、侵害リスクが高まります。そのため、ビジネス文書や広告では、本来の一般名称(普通名称)に言い換えることが、コンプライアンス上の安全な対応となります。

参照:【マーケ担当者必見】他社商標を使ったSEO・リスティング広告はどこまでOK?法律上の境界線とNG事例を解説

5.まとめ

商標登録されている単語であっても、その言葉自体が世の中から使えなくなるわけではありません。日常会話や事実の説明、辞書的な意味での使用は自由であり、商標権の効力が及ぶ範囲ではありません。

問題となるのは、他社のブランド名に便乗して、自社の商品やサービスを売るための目印として使ってしまう場合です。これが商標的使用に該当し、商標権侵害(アウト)となる可能性が高まります。

そのため、ビジネスでキャッチコピーやサービス名を決める際には、

その言葉が「一般的な説明」にとどまっているのか、それとも「ブランドとしての使用」になってしまっているのか 

を冷静に見極めることが重要です。ここを誤ると、意図せず他社の商標権を侵害してしまうリスクが生じます。

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